スリランカ高齢者ケア政策・モデル形成プロジェクト(2015年1月-2017年3月)
写真は最終セミナ兼高齢者ヘルスポリシー発効記念セミナーで保健大臣から感謝状を授与された時のものです。
2015年1月ー2017年3月までスリランカ保健省をカウンターパートにJICA草の根プロジェクトを実施しました。
佐久穂町を提案自治体、農村保健研修センター(佐久市)を実施団体として、2年間実施されたプロジェクトです。
●プロジェクト活動概要
スリランカ高齢者包括ケア政策・モデル形成プロジェクト(以下プロジェクト)は、2013年7月、(一財)農村保健研修センターが、スリランカ保健医療従事者を対象にJICA青年研修事業「スリランカ保健医療行政コース」を実施したことをきっかけに、彼らの帰国後の保健省への提言をもとに始まった。佐久穂町を提案団体、(一財)日本農村保健研修センターを実施団体として、2014年12月24日にミニッツ締結、2015年2月17日にJICAと実施機関である農村保健研修センターで契約締結、地域活性化特別枠というスキームで、実質2年間のプロジェクトとして実施された。保健省の高齢者政策担当課であるユース・高齢者・障害者ユニット(YED;以下YED)を中心に、保健省直轄のワッタラハンセン氏病院(以下:ワッタラ病院)、中央州保健局と中央州管轄のカドガンナワ中央州現職研修センター(以下:RHTC)、カドガンナワ地区病院、ナワラピティア地域基幹病院およびウワ州バドウラ県保健局をモデルプラン作成のカウンターパートとして実施体制が構築された。プロジェクトの目標(成果)は、1)スリランカ保健省の高齢者基本政策(ヘルスポリシー)の策定、2)政策実現ための高齢者ケアTOT研修の企画と実施、3)国の高齢者ケアモデル病院(施設)プラン作成、4)高齢者ケアモデル病院プランの作成、5)コミュニティにおける高齢者ケアモデルプラン作成である。これらの活動を進めるための、保健省管轄の病院施設の状況およびバドウラ県のコミュニティにおける高齢者に関する生活健康基礎調査をおこなった。また日本の高齢者ケア対策を参考とするために、上記の保健省および関連機関のカウンターパート31名の日本研修をおこない、彼らを中心に国、州、県の各レベルの作業グループの組織つくりとグループの活動支援をおこなった。日本研修は、1970年代からの日本の高齢化社会、高齢社会、超高齢社会への進展の歴史と日本の官民挙げての対策を視察し、高齢化対策のために、日本が行っている保健政策のパラダイムシフトや地域包括ケアシステムつくりの取り組みを共有した。この研修により、スリランカの高齢化対策に必要な基本政策や必要なサービス提供のメカニズムを理解してもらった。研修後は、彼らが各レベルの作業グループの中心となり、プロジェクト活動を進める大きな役割を果たした。2年間のプロジェクト活動の成果は以下のように要約される。
1.スリランカ国の高齢者ケア保健政策の基本方針(ポリシー)が作成され、内閣承認を経て正式な保健省の政策となった。政策に基づく高齢者ケアを病院・施設で具体化するための高齢者ケアTOT研修をカドガンナワ中央州研修センターおよびワッタラ病院(国の高齢者ケアのモデル病院となることが基本政策で認められた)で企画実施した。合計600名のTOT研修を実施し、その後は、受講者による病院現場スタッフの研修がすでに開始されている。
2.高齢者ケア基本政策に基づき、保健省YEDの高齢者ケア提供プラン(Elderly Health Care Delivery Plan)が策定されて、ポリシーの実行プランが示された。また、スリランカで初めて企画実施された高齢者ケアTOT研修をもとに、国の高齢者ケア研修ガイドライン(モジュール)の作成作業が開始された。
3.国の高齢者ケアモデル病院(施設)として、ワッタラ病院をナショナルセンターとすることが、基本政策で認められた。今後、新しいモデル病棟の改修工事や研修センターを設置するプランで、2017年中に改修工事が開始されることになっている。今後、モデル病院機能の一つとして、国の高齢者ケアTOT研修が保健省YEDによって、継続実施される予定である。
4.病院モデルプランの作成は、プロジェクトサイトである中央州ナワラピティア病院とカドガンナワ病院で計画され、実施されつつある。具体的には、“高齢者に優しい病院”つくりとして、スタッフの研修、高齢者外来の設置、高齢者病棟の設置、病院施設の改善、リハサービスの改善などの分野で具体化されつつある。ナワラピティア病院では、200名以上のスタッフ研修を実施し、外来、病棟のトイレの改修が行われた。一方、管轄の中央州保健局で、2017年以降の高齢者サービス提供プランを作成し、ナワラピティア病院やカドガンナワ病院の高齢者ケアを進め、モデル病院として、中央州の高齢者ケアプランを進めることになった。高齢者ケアTOT研修については、今後も、中央州のスタッフを対象に高齢者ケアTOT研修を継続する計画となりことになり、予算も計上されている。
5.バドウラ県でのコミュニティプランも、基礎調査をベースに、バドウラ県の高齢者ケアプランが作成された。プロジェクトサイトであるカンダカテイヤでは、、ウワ州で初めてカンダカテア病院に高齢者外来を開設、保健センター(YLTP青年研修員が所長を務めている)や地域福祉事務所とも連携して、地区の高齢者に対する高齢者ケアプランを導入することを決めている。プロジェクトで作成した高齢者ケアノートを病院と保健センターに導入して地区のケアが必要な高齢者全員を対象に、情報収集、管理、サービスを提供する試みは、スリランカで初めてのパイロットプログラムであるが、今後の進展が期待できる。
結論:プロジェクトは、おおむね計画された目標を達成したと考える。スリランカ保健省で初めて作成された高齢者ケア基本方針(ポリシー)をもとに、すでに、中央州やバドウラ県保健局など今後の具体的な高齢者ケアプランを作成した。モデル病院となったナワラピティア病院、カドガンナワ病院、カンダカテア地域でも、それぞれ中央州保健プラン、バドウラ県保健プランの一部としてそれぞれ、具体的な活動が進められることになった。この経緯が示すように、高齢者ケアポリシーの策定によって、今後、この基本政策に基づいて、スリランカ全国の州、県、地域の各レベルでも具体的な高齢者ケアプランが作成できる体制が整った。プロジェクトの上位目標 “スリランカにおける高齢者ケアの基本的制度(システム)の基礎をつくる” の基盤ができた。今後は、福祉分野の担当機関である福祉省との協力・連携を進めることによって、スリランカの優れたPHCを活用した、スリランカの特性を生かした、低コストの地域包括ケアの仕組み(メカニズム)が作られることが期待される。